1. 旧GAとの変更点や大きな違いは?
GA4での最大の変更点としては、計測の概念がガラッと変わった点であると思います。また、それに伴い導入方法にも幾つかの変化が見られました。 ここでは、旧GAとGA4とで、大きく変化した2点について解説していきます。
1-1. 「ユーザー単位」での計測が可能に?
これまでの計測は「ページ」単位での確認が主流であったのに対して、GA4では「ユーザー」単位での計測に変化しました。 また、これまでの分析は「セッション」方法での確認が主流であったのに対して、GA4では「イベント」方法での分析に変化しました。
これはつまり、ページに残る結果しか得られなかった従来から、その結果が残るにあたっての「ユーザーの行動」までを把握することが可能となったと考えられます。
マーケティングのベクトルもパーソナライズ化であることは明らかですが、今後はGoogle アナリティクスも全体の結果を把握するだけではなく、顧客一人一人に目を向け、カスタマージャーニーの明確化を実現していくべきという、Google社からの強いメッセージが伝わってきます。
1-2. 「ビュー」が廃止?新しい項目「データストリーム」とは?
旧GAでは、測定の分類を行う際にはプロパティ下のビューを活用する必要がありました。しかし、GA4ではビューに変わる「データストリーム」という項目が新たに追加されています。
図1:データストリームの設定画面
そのため構造としては、従来の「組織>アカウント>プロパティ>ビュー」から、GA4では「組織>アカウント>プロパティ>データストリーム」という構造に変更されました。
このデータストリームの大きなメリットとしては、Google
タグマネージャーでのタグ設定をわざわざ行わなくても、Webサイトにおけるさまざまなイベントを自動計測してくれる点です。
自動測定が可能なイベントは主に下記の6つです。
- ページビュー数
- スクロール数
- 滞在ドメインからの離脱クリック
- サイト内検索されたキーワード
- 動画の開始、終了、再生時間エンゲージメント
- ファイルダウンロードのクリック
※測定機能の強化 - アナリティクス ヘルプ https://support.google.com/analytics/answer/9216061
これらの機能は「データストリーム」→「ウェブ」→「測定機能の強化」から設定可能となっています。
各機能の収集されるデータや内容を把握し、自社のWebサイトに合った機能を追加すると良いのではないかと思います。
2. GA4を導入すると具体的に何ができるの?
ここでは、実際にGA4を導入することによって活用できる新しい機能について、主に3つご紹介します。
2-1. 顧客の将来行動が予測可能に?
これまでも何度か話題となったGoogle アナリティクス上での機械学習の提案が、GA4でついに本格的に導入されました。
これが何を意味するのかというと、過去のデータを自動的に分析することで、顧客が将来取るであろう行動の予測が可能になったということになります。
具体的な予測機能の例としては下記の2つが挙げられます。 ※ただし、過去28日間で1000件以上のデータが存在していることが条件。
1. 購入確率:過去28日間にアプリやWebサイトに訪問したユーザーを分析し、今後7日間に購入するかどうかの確率を予測する。
図2:購入確率の予測
2. 離脱確率:過去7日間にアプリやWebサイトに訪問したユーザーを分析し、今後7日間に離脱するかどうかの確率を予測する。
図3:離脱確率の予測
実際の活用事例としては、Vistaprint社によるパンデミック開始時のマスクの需要に伴うビジネス対応や、Domino's Pizza of CanadaによるGoogle広告をリンクした顧客へのアクションの最適化などがあります。
上記の予測機能を活用することで、コンバージョンに至る可能性の高い顧客へのアプローチや、離脱する可能性の高い顧客への対策など、さまざまな改善策を事前に考えることができるようになります。
2-2. ウェブとアプリのデータを統合?
これまでは、Webサイトの計測はGoogleアナリティクス、アプリの計測はFirebase Analytics(もしくはAppsFlyer)など別々に計測を行っていた方も多いのではないでしょうか。
しかし、GA4ではプロパティ内に「ウェブストリーム」と「アプリストリーム」が存在し、「Googleシグナル」という機能を利用することで、GA4プロパティ内にてWebサイトとアプリの両軸の計測を確認することが可能となりました。
その結果、これまで分析が複雑であった、同ユーザーによるWebサイトとアプリのクロスプラットフォーム分析が実現され、同一人物としての紐づけが可能となりました。
2-3. BigQueryが無償で利用可能に?
そもそもBigQueryとは何なのかというと、Google Cloud Platformが提供している、ビックデータを超高速に分析することができる画期的なサービスです。
例えば、Webでどういう行動をしているかというGA4のデータと、オフラインで店舗に足を運び買い物をしている顧客購買データの2つのデータをBigQueryにいれることで、2つを紐付けるキーさえあれば、このWebページを見た人は店舗でこれを買う傾向にあるというような分析ができるようになります。
これまでBigQueryは、有料版の「Google アナリティクス 360」でのみ、利用することが可能でした。しかし、GA4からはそれが無償で利用可能となりました。
また、これまで設定はFirebaseの管理画面から行うなど、活用する上でも少々ハードルが高いイメージでしたが、GA4からは、Google アナリティクスの管理画面から設定が可能となったため、連携もしやすくなりました。
よって、自動エクスポートされたデータをSQL(データベース言語)により取り出し、オフラインデータと統合することで、より高度な分析を行うことが可能となりました。
2-4. プライバシー問題への対応が可能に?
今回のGA4アップグレードの背景は、近年問題となっている、Cookieを活用したデータ計測の廃止や、世界基準でのプライバシー問題への対応が関連していると言われています。
世界基準のデータ規則については下記の2つが挙げられます。
- GDPR:EU一般データ保護規則
- CCPA:カリフォルニア州消費者プライバシー法
もし仮にGDPRに違反した場合には、その企業の全世界売上の2%または1,000万ユーロのうち、どちらか高い方を罰金として支払う必要があります。
これらの罰則に違反しないために、GA4は上記2つのデータ規則に準拠したツールとなっています。
また、2020年9月3日にはGoogle 同意モード(Consent Mode)という新機能が導入されました。
これにより、これまでユーザーのCookie同意が得られない場合には、データを全く取得することができなかったのに対し、ユーザーのCookie同意を得られない場合でも、個人を特定しない必要最低限のデータを取得することが可能となりました。
他にも、これまで対応できなかったGoogle アナリティクス上でのデータの削除に関して、ユーザーから依頼があった場合には必要最低限のデータ削除が可能となりました。
3. GA4を実際に導入した際の注意点
ここでは、実際にGA4を導入する際の注意点について、4つ紹介していきます。
3-1. アップグレードしたら旧GAは消える?
GA4を利用するためには2つの方法があります。
- 新規でプロパティを作成する方法。
- 既存のプロパティをアップグレードする方法。
この2つの方法のうち、特に②に関して、「前のプロパティは消えるの?」「データはまた一から収集するの?」などの疑問や不安を抱いている方も多いのではないかと思います。
ですが、その点に関しては安心していただいて問題ありません。
従来のアップグレードとは異なり、新プロパティとしてGA4プロパティを作成するため、旧GAのプロパティはそのままで共存することができます。
3-2. 設定にはG-タグが必要?
旧GAでは「UA-タグ」を発行し、設置することでデータを収集していました。しかし、今回のGA4では設置するタグにも変更が見られます。それが「G-タグ」です。
図4:ウェブストリームの詳細画面
これがどういうことかというと、すでにUA-タグを設置している既存のWebサイトの場合、新たにG-タグを発行し、設置することで、これまで通りのデータ収集に加えて、GA4へのデータ収集も可能になるということです。
また、これまで通りのUA-タグを発行したい場合は、「プロパティ設定」→「詳細オプションを表示」から発行が可能です。
3-3. UIの違いはあるの?
GA4ではUIにも大きな変化が見られました。そのため、これまでの旧GAを使用していた方からすると、「これはなんだ?」「あの指標はどこだ?」と思う部分も多いのではないでしょうか。
ここでは大きく変化が見られたリアルタイム画面と、左側のナビメニューについて紹介していきます。
まず、リアルタイム画面に関しては、これまで以上に直観的な表現をしており、背景の地図など一目で分かるデザインに変更されています。
図5:リアルタイムの概要画面
次いで左側のナビメニューに関しては、旧GAにはなかった「エンゲージメント」「収益化」「維持率」など、それ以外にも多くの項目が追加されています。
また、探索内の「分析」という機能では、目標プロセスの分析や、ユーザー行動の詳しい分析など、自由度の高い分析を行うことが可能となりました。
図6:従来メニューとGA4メニューの違い
これまでの旧GAで見ていた代表的な集計結果に関しては、GA4では「ホーム」から「すべてのイベント」内にて確認することが可能です。
3-4. 各々のツールとの連携は?
現段階のGA4では、旧GAと変わらず連携が可能なものもあれば、まだ連携が不可能なものもあります。
GA4でも連携が可能であり、今まで以上に強力になったのが、「Google広告」との連携です。機械学習の導入により、将来予測が可能となったことから、顧客へのアプローチや広告費の削減などの新しい対策が可能になることが予想されます。
反対に、現段階でまだ連携が不可能なものは「Google Search
Console」など、Googleサービスであるにも関わらず連携できないものがある状況です。
これらの課題解決に関しては、今後のGoogleによるアップデートに期待しましょう。
4. GA4は今すぐ導入するべき?
GA4では、ページ単位では解析しづらかった「ユーザーの行動」を正しく把握できるだけでなく、「コンバージョンに至った本当の要因」を明確化しやすくなりました。
現状、他ツールとの連携がまだ旧GAのようにできない点や、CMSベースのWebサイトへの導入が困難である点などありますが、これから随時アップデートされて解決していくことが予想されます。
例えば、世界的シェアを誇っているShopifyでも現時点では管理画面から登録できず、正式対応するには時間かかるかもしれませんが、ShopifyのGA4の導入は設定だけであれば、10分程度で簡単にできます。
そのため、本格的な移行は、2021年以降を目指し、まずは移行というより並行導入して、データ蓄積を開始し、今からGA4に慣れていくことをおすすめします。